法律ワンポイント

不倫・不貞/慰謝料を払わなくてもいい場合

Q 妻子ある男性と不倫関係になったのですが、男性の妻に慰謝料を払わなくてもよい場合もあると聞きました。どのような場合ですか?

 

A 夫婦である男性とその妻との婚姻関係が既に破綻している場合は、慰謝料を支払う義務がありません

実際に最高裁で問題となった、「夫が婚姻中にY女と不貞」した事案では

 

① 昭和42年に婚姻

② 昭和43年と46年に子どもが生まれる

③ 昭和59年に夫婦関係が著しく悪化。 妻は夫に財産分与等を要求

④ 昭和61年 夫が家裁に離婚調停を申立。しかし、妻が出頭せず、調停を取り下げ

⑤ 昭和62年 夫が自宅を出て、妻と別居開始

⑥ 昭和62年 夫がY女と知り合い、妻と別居後に交際開始

⑦ 平成元年  Y女は夫との子を出産

 

上記の事実関係において、最高裁は妻からY女への慰謝料請求を棄却しました。

その理由を,

「第三者が配偶者のある者と肉体関係を持つことが他方の配偶者に対する不法行為となるのは、それが他方の配偶者の婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるのであって、夫婦間の婚姻関係が既に破綻していた場合には、原則として、このような権利または法的保護に値する利益があるとは言えない」

と述べています(最高裁平成8年3月26日判決)。

 

つまり、夫婦関係の実質的な状況に着目し、不貞の交際以前に夫婦関係が破綻し形骸化しているような場合には、法律で守るべき利益はないとしたのです。

上記の裁判以降、実務的には不貞の第三者から、「婚姻関係は既に破綻していた」との主張がよくなされ、「破綻していたか否か」をめぐる激しい攻防が繰り広げられています。

 

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